変形性膝関節症-大腿四頭筋-

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前回は、【変形性膝関節症-関節が硬くなる-】について書きました。

変形性膝関節症-関節が硬くなる-

今回は【変形性膝関節症-大腿四頭筋-】をご紹介したいと思います。

膝の変形・痛みと死亡リスク

また、膝OAによる活動性の低下から高血圧や糖尿病を発症し心血管疾患の合併により死亡に至る危険性が高いことが指摘されている。¹⁾

画像診断による膝OA(radiographic knee OA, RKOA)は心血管障害、糖尿病および腎障害による生命予後に関与するとの報告がある。膝痛を伴う膝OAは死亡のリスクを上げるとする報告もある。¹⁾

⇒膝の変形・痛みがあると心血管障害、糖尿病および腎障害により死亡リスクが上がる

時間の経過とともに変形していきやすい

欧米での10年以上の長期の追跡報告から、サンプルサイズは大きくないものの、中年以降では変形性膝関節症(膝OA)と診断されていたものはほぼ全て進行することがわかっている。膝OAと診断されていないものでも、膝痛を持っているものはほぼすべて膝OAに進展する。日本においては地域住民を対象に21年の長期追跡を実施した松代膝検診の結果から、61%に新たに膝OAの発生が認められたとの報告がある。¹⁾

⇒変形性膝関節症の診断をされていなくても、膝痛がある方は時間の経過とともに変形性膝関節症になる可能性が高い

運動で改善・予防

運動療法は、鎮痛、身体機能改善効果、日常生活機能改善効果を認め有用である。推奨の強さ■ 1:強い(実施することを推奨する)¹⁾

⇒運動をすることは、痛みの軽減や日常を快適に過ごすために有効

運動器の機能低下は、運動器を使うということでしかその機能を回復させることができないという特徴がある。¹⁾

⇒運動をして鍛えなければ、機能は改善しにくい

もも前の筋肉を鍛えましょう!

非荷重位での大腿四頭筋の等尺性収縮が痛みなく実施可能であること、膝伸展可動域の制限が少ないことが日常生活動作の疼痛の少なさと関係することが示された。²⁾

⇒もも前に痛みなく力を入れられると、日常生活動作での痛みが少ない

低負荷膝伸展時の内側広筋、大腿直筋の筋張力は膝OA患者の1年後の症状や機能に影響することが示された。協働筋間の筋張力の不均衡は関節負荷を増大させる。低負荷膝伸展運動中に内側広筋の筋張力が低く、大腿直筋の筋張力が高い特徴は、症状悪化に関わる関節負荷増加に関連し、将来の症状や機能低下に影響した可能性が考えられる。³⁾

⇒膝を伸ばす動作の際、内側広筋の働きが弱いと関節への負荷が大きくなり症状が悪化しやすい

股関節開排筋力測定は大腿四頭筋筋力と同様に、高齢者における体力全般を表す指標となりうることが示された。⁴⁾

⇒もも前の筋力は、高齢者での体力全般の指標になる

足の太さと筋厚

本研究では、要介護高齢者(男性23人、女性37人)を対象に、大腿四頭筋筋力と大腿前面筋厚(以下、筋厚)・脂肪厚、大腿周径、大腿前面筋硬度との関連を検討した。単相関解析の結果、男性では大腿周径が、女性では筋厚と大腿周径が、大腿四頭筋筋力との間に有意な相関を示した。また重回帰分析の結果、男性では大腿周径が大きいほど、女性では筋厚が厚いほど、大腿四頭筋筋力が強かった。⁵⁾

女性では、脂肪量の影響が強い大腿周径ではなく、直接筋肉のサイズを測定する筋厚が、大腿四頭筋筋力を反映する指標であることが示唆された。⁵⁾

膝OA群では健常群に比べてRF(大腿直筋)やVI(中間広筋)、VM(内側広筋)の筋萎縮が生じていたが、VL(外側広筋)筋厚は維持されていた。また、膝OA群における大腿四頭筋の中でもVLは他の3筋に比べて有意に筋厚が維持されていることが示唆された。膝OA患者では歩行時VLの筋活動が高いことから、VLは量的に維持されやすい可能性が示唆された。⁶⁾

RF(大腿直筋)・VI(中間広筋)・VM(内側広筋)・VL(外側広筋)

変形性膝関節症(膝OA)患者における大腿四頭筋の機能低下には、筋量低下と筋質低下が影響する。筋質低下とは主に筋内脂肪増加による非収縮組織量の増加⁷⁾

⇒変形性膝関節症の方は、ももの太さが細くなり・筋肉が痩せている

階段

内側広筋と外側広筋の筋活動は昇段動作で最も大きな値を示していた。内側広筋と外側広筋の筋活動の比率は歩行に比べ段差昇降動作で大きな値を示し、内側広筋の活動の関与を高めていた。⁸⁾

段差昇降では身体の内外側方向の安定化に内側広筋の活動が寄与していることが明らかとなり⁸⁾

⇒階段を上る際は、もも前(内側・外側)の筋肉が多く使われる

⇒歩行に比べて、階段昇降では内側広筋がより活動することで安定させている

膝痛有訴者のうち膝痛により歩行や階段昇降に支障をきたしている者は、膝痛有訴者でも日常生活活動への影響なしの者より歩数や中等強度以上活動時間の低下がみられ、特に中等強度以上活動時間への影響が顕著であった。また、体力においては、膝痛により歩行や階段昇降に支障をきたしている者は、膝痛有訴者でも日常生活活動への影響なしの者と比較して膝伸展力が劣っていた。⁹⁾

⇒歩行や階段で膝痛がある方は、膝を伸ばす力が弱い傾向がある

片足立ち

本研究の対象者における開眼片足立ち時間は、膝痛有訴者が非膝痛有訴者と比較して約30秒有意に短い値を示した。⁹⁾

⇒膝が痛い方は、痛みのない方に比べて片足立ちができない(資料では30秒)

膝が横にぶれるクセ

膝OA患者に認められるスラストは、安静時痛、動作時痛、そして日常生活の困難さと、独立して関連していることが明らかになった。安静時痛に関して、先行研究ではスラストに伴う機械的刺激が組織の損傷を引き起こすことが報告されており、この損傷が炎症を引き起こし、安静時痛に関連していると考えられる。動作時痛に関しては、これまで歩行時痛との関連性が数多く報告されているが、階段下り時の膝関節痛とも関連していることが新たに明らかになった。これは、動作時に生じる膝内反モーメントの増加が膝関節痛の発生に関与していると考えられる。さらに、立ち上がりや連続歩行の困難さには、スラストによって生じる膝関節痛が介在し、間接的に影響を及ぼしていると考えられる。¹⁰⁾

⇒膝が外にぶれるクセがあると、負担が大きくなり痛みにつながりやすい

体重

本結果より過体重・肥満者の膝の痛みの改善には、減量のみでなく、より高い持久力向上につながる活動量の増加が重要であることが示唆された。¹¹⁾

⇒減量+運動で体力をつける必要がある

まとめ

今回は【変形性膝関節症-大腿四頭筋-】について紹介していきました

膝の変形・痛みがあると心血管障害、糖尿病および腎障害により死亡リスクが上がる

運動をすることは、痛みの軽減や日常を快適に過ごすために有効

変形性膝関節症の方は、ももの太さが細くなり・筋肉が痩せている

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がじゅまる整骨院院長(加藤由基)

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参考文献

1)日本整形外科学会,変形性膝関節症診療ガイドライン,変形性膝関節症診療ガイドライン 2023 策定組織

2)秋本剛/横山茂樹/和田孝明 他,変形性膝関節症患者における膝伸展機能と日常生活動作時の疼痛の関係-大腿四頭筋収縮時の疼痛発生パターンに着目して-,日本理学療法士協会,第53回日本理学療法学術大会 抄録集,2019

3)八木優英/谷口匡史/建内宏重 他,変形性膝関節症患者の低負荷膝関節伸展時の大腿四頭筋張力は1年後の膝関節症状と機能に影響する,日本運動器理学療法学会,運動器理学療法学2022年2巻Supplement p.P-13

4)松本典久/村田伸/白岩加代子 他,地域在住高齢者における股関節開排筋力および 大腿四頭筋筋力と身体機能との関連,日本ヘルスプロモーション理学療法学会,ヘルスプロモーション理学療法研究2020年10巻1号p.15-20

5)合田明生/村田伸/谷川加奈子 他,要介護高齢者における大腿四頭筋筋力と大腿前面筋厚・ 脂肪厚,大腿周径,大腿前面筋硬度との関連,日本ヘルスプロモーション理学療法学会,ヘルスプロモーション理学療法研究2019年8巻4号p.181-185

6)谷口匡史/福元喜啓/建内宏重 他,変形性膝関節症患者における大腿四頭筋の量的・質的分析,公益社団法人 日本理学療法士協会,第47回日本理学療法学術大会 抄録集,2012

7)岡田笙吾/谷口匡史/八木優英 他,早期変形性膝関節症患者における大腿四頭筋の筋変性と膝関節機能との関連,日本運動器理学療法学会,運動器理学療法学2022年2巻 Supplement号p.O-29

8)笠原敏史/鳥井勇輔/高橋光彦 他,段差昇降の大腿四頭筋の活動と床反力の関係,日本理学療法士協会,理学療法科学2009年24巻4号p.523-528

9)東恩納玲代/永山寛/吉田剛一郎 他,主観的な膝痛を有する女性高齢者の身体活動、体力および生活機能:膝痛の日常生活活動への影響,日本生涯スポーツ学会,生涯スポーツ学研究2018年15巻2号p.37-46

10)福谷直人/飯島弘貴/青山朋樹 他,変形性膝関節症患者における外側スラストの出現は安静時痛,動作時痛,日常生活動作の困難さに影響する,日本理学療法士協会,第50回日本理学療法学術大会 抄録集,2015

11)長谷川共美/池本竜則/井上雅之 他,過体重・肥満者の運動器疼痛と身体機能の関係,日本疼痛学会,PAIN RESEARCH2014年29巻1号p.1-8